保育士不足が社会問題になり、政府は保育士を増やす取り組みを行っています。
そのような状況から、もしかして『今後、保育士試験合格者が増えるのでは?』と期待されている方がいるかもしれませんね。
しかし、私の予想では「合格率が上がり合格者の数が急激に増えることはない」と考えています。
以下がその理由です。
難易度が違いすぎる!保育士試験と大学保育科での取得の差
保育士資格を取得する方法は2つあります。「大学等の保育士養成施設を卒業すること」、もしくは「保育士試験に合格すること」です。
大学等の養成施設を卒業して保育士資格を取得することは、それほど難易度の高いことではありません。
通学の大学の中には偏差値の低い大学もありますし、通信制大学は高卒以上であれば誰でも入学できます。また、まじめに勉強していれば卒業できます。
一方、保育士試験の合格率はおおむね20%以下と低いです。平成25年度・保育士試験は受験者数51,055人のうち合格者8,905人、合格率17.4%。
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | |
受験者数 | 51,055人 | 51,257人 | 46,487人 |
---|---|---|---|
合格者 | 8,905人 | 9,894人 | 10,578人 (1次試験) |
合格率 | 17.4% | 19.3% | ー |
*厚生労働省・保育士試験より
*平成27年度は1次試験の合格者数のみ発表、全体の合格者は未発表。
保育士試験の合格率はなぜ低い?
例えば、平成25年度の保育士試験の合格者数は8,900人です(合格率17%)。 これは同年度に大学等の保育士養成施設を卒業し、保育士資格を取得した人(約4万人)の2割程度に過ぎません。
つまり、大学等の保育士養成施設を卒業し保育士資格を取得している人数のほうが、一般の受験者数より圧倒的に多いのです。
なぜ保育士試験の合格率は低いのでしょうか。 その理由は保育士試験の問題の制作者が、一般社団法人の全国保育士養成協議会だからです。
より明確に説明すると、全国保育士養成協議会の会員(約500名)の方は全て大学等の保育士養成施設の関係者であって、大学保育科の大学教授が保育士試験の問題を作っているのです。
したがって、もし仮に保育士試験の合格率が上がって、簡単に保育士資格を取得できるようになってしまうと、 最短で2年間の時間と高い学費を払ってまで、大学等の保育士養成施設に入学したいと思う人が減ってしまうからです。
もしそうなったら、入学者が減って、大学等の保育士養成施設の利益が減ってしまうことになります。たくさんの大学や短大、専門学校は潰れてしまうでしょう。
なので、保育士試験の合格者数が、保育士養成施設を卒業した人たちの合格者数を上回ることは絶対に起こり得ないのです。
このように、全国保育士養成協議会が既得権益を持っていて、保育士試験をめぐる利益相反の問題があるのです。
とはいえ、状況は改善しつつあります。
地域限定保育士試験が実施され、保育士試験が年2回になりました。
保育士不足の本当の原因
保育士不足の原因は、保育士資格の保有者が少ないのではありません。
保育士資格を取得したけれど保育士として働いていない人が多い、いわゆる潜在保育士が本当の原因です。保育士の資格保有者は十分います。
もっと保育士の待遇改善をして、働きたいと思う人が増えるといいですね。